「じゃ、コレ見ろ。」

 
 そう言って見せてきた記録表を覗くと、霞が隅の方をペンで叩いた。


 「この通り、ここら辺から記録が落ちてて…」


 と、何か言っているがそれを聞き流して…

 そこに書かれた文を読んで、あたしの頬は一気に緩みそうになった。



『今晩、部屋に来い』


 
 霞の字で、簡潔に書かれたその言葉は、あたしを喜ばせるには十分だった。

 あたしはニッコリ笑って
 
 
 「わかった。
 頑張るね。」


 と言った。

 霞も意味がわかったみたいで笑顔で頷くと男子の中に入って行った。


 
 早く終わらないかな!



 いつもより切実に思った。

 その日はいつもより霞を目で追ってしまう。

 目が合いそうになると、慌てて逸らすんだけど、逸らした後もやっぱり追ってしまう。


 
 …なんか、ヤバイかも…

 あたし、霞のとこ、本気で好きになっちゃった…?


 
  
 ――――――――――――――――
 ――――――――――――……

 今晩っていうのが何時か分からなかったから、練習が終わってご飯を食べると早々にお風呂に入って霞の部屋に来た。


 来た…はいいけど、今だドアを開けられないあたし。


 
 緊張しちゃって開けきらないよ。
 
 手が震える…

 まずノックをしてみる。


 トントン…



 手に力が入って逆に音が小さくなっちゃった!

 聞こえてるかな…?

 聞こえてるわけないよね。



 もう一度ノックしようと胸の前で作ったままの拳を振る。

 …と、急にドアが開いて霞が隙間から顔をだした。

 
 「よう。」

 「わあ!!」