「ねぇねぇ、相手は誰なの!?」


 昨日の夜、佳耶があたしの首筋のキスマークを見付けてからずっとこれだ。

 好奇心でいっぱいの目で問い詰めようとする。


 だからあたしは…


 「違うよ!!
 ダニにやられたんだよ!!」


 と、バレバレな嘘を吐く。

 当然、佳耶も嘘だと気付くわけで…


 「んなわけないでしょ!! その犯人は誰なの!?
 そろそろ吐けー!!」


 と、更に問い詰められる。


 「もう、犯人はダニだってば!」


 下手な嘘をつきながらあたしは、これの真犯人、十夜に心の中で罵倒を浴びせてた。



 十夜のバカバカバカ!

 何でこんなのつけたのよ!!



 佳耶が口を開いた時、今あたしが一番憎たらしい奴の声が聞こえた。


 「おい、お前ら何やってんだよ!
 早く走れ!!」

 「わっ!十夜先生!!」


 あたし達が逃げる様に走りに行こうとすると、十夜がまた言った。


 「郷原、お前ちょっと来い。
 話がある。」


 それだけ言うと十夜はさっさと歩いて行った。


 「なんだろうね?」

 「さあ?」


 佳耶があたしの肩にポンッと手を置いて言った。


 「頑張ってね。」

 「…面白がってるでしょ?」

 「何やったの?
 耶奈。」

 「…知らないよ。」


 あたしはちょっと肩をすくめて、慌てて見失いそうな十夜を追った。