「そっかぁ?」
「そうだよ!最近よく私絡まれるんだけど、あんたのファン達に」

「まじで!?俺にファンなんかいたんだ?」
「驚くとこ、そっち?」




なんて、とぼけたりしてみて。








その日の夜、俺が風呂から上がって部屋に入ると。



ベッドに座って、よっ!と出迎えた智莉。



「…お前、また来たの?」
「いいじゃん、隣同士なんだし。」


そう、智莉はベランダからよく俺の部屋に侵入してくる。

昔は、俺も智莉の部屋に行ったりしてたけど今はさすがに行ってない。



「風呂上がり?偶然だね、私もだよ」

ジャージを着用してラフな姿の智莉。

智莉の隣に座ると。
確かに、シャンプーのいい香りがする。





思わず、ドキッとした。
一瞬抱き締めたくなって。



けれど、俺はそれを我慢する。


「………あ、悪いんだけどさ。また台本合わせ手伝ってくれる?」
「いいよ?何、今度はドラマ?」
「そうそう。学園ドラマの生徒役。」
「へぇ…すごいね!」





ペラペラと台本をめくりながら話す智莉。
けれど、表情はどこか寂しげだった。


「どうかした?」
「…んー?なんかさ、段々裕也が離れていっちゃう気がして」



変わらず、俯いたままでどんな表情なのかは分からないけど、その言葉で俺の理性が一瞬飛ぶ。


「…何言ってんだよ。離れないよ、俺は」



思わず、俺は智莉を抱き寄せる。




智莉から漂う甘い香り。
俺は、それだけで酔いそうになる。