鳴り響いたチャイムに、水無月くんが「あっ」と声をあげて立ち上がると、手を伸ばして机の上に置かれたコーヒー牛乳を一つだけ掴み上げる。


「それじゃあ瀬戸さん、今日の放課後はコーヒー牛乳をお供に、今後の活動方針について話し合おうね。約束したからね、忘れないでよ!」


活動方針って……部活動か。
軽やかに手を挙げて去っていく水無月くんを見送り、机の上に視線を移す。

一本だけ、置いていかれたコーヒー牛乳。
伸ばした手がパックに触れる直前に、ふと桃太郎ルールのことが頭をよぎったが、もう今更なので一瞬の躊躇もすぐに消し去ってパックを掴んだ。

みんなは何かを激しく勘違いしているが、私と水無月くんは別に特別な関係ではない。
ただのクラスメイトよりは仲が良くて、友達や親友というくくりだと何だかちょっぴり怖い、そんな関係だ。

勉強が出来て、スポーツも万能で、顔も性格も最高な水無月くんは、変わり者という欠点を持った大変残念なイケメン。
そして私の生活には、そんな残念な水無月くんが欠かせなかったりする。
これはまあ、本人には内緒だけれど。