「莉桜…桜散っちゃったな…。」
まるで子犬のようにしょんぼり落ち込む日向くんに、私は少し微笑んで見せる。
「来年もあるから。もう少し待とうよ?」
なぜだか日向くんは桜が大好きで、毎年同じ事を言って落ち込んでいる。
「うぅ…。莉桜が言うなら来年まで待つ!」
パッと顔が明るくなって、ひだまりのような笑顔を私に向ける。
ドキンッ…。
自然と胸の鼓動が加速して、私は少しうつむく。
なんか…日に日に格好良くなっていくな…。
この間も呼び出されていたし……。
彼女とか…作らないのかな……?
ただ家が近いというだけで、こうして毎日下校を共にしているけれど……。
…………うーん……。
「莉桜?」
「え?」
ふと我に返った私はパッと顔を上げる。
「ったく。俺の話し聞いてたか?」
コツンと拳で頭を優しく突かれる。
「…っ…。」
照れを隠すように頭をおさえる私。
「明日弁当頼むな?母さん今日遅いから。」
「え、あ、うん。お弁当ね…。わかった。」
そうか…。
明日は日向くんのお母さん遅い日か…。
「あの、莉桜の得意な唐揚げ、入れてくれよ!」
「え…?」
な、なんで私が唐揚げ得意なことを知ってるの…?
「俺唐揚げ大好きだから!」
日向くんの両親は共働きで、お母さんが帰りの遅い日は私が日向くんにお弁当を作ることになっている。
正直私は料理などあまりできなくて、日向くんのために必死に練習をした。
もちろん。日向くんの好物の唐揚げは特に。
だからか。
気付けば私の得意料理は唐揚げになっていた。
「じゃあ、明日楽しみにしてっから。」
ハッと我に返った時にはすでに家に着いていた。
「また明日な。」
ニコッと微笑まれて、私は慌てて深くお辞儀をする。
「また明日。」
私が顔を上げると、日向くんはまた微笑んで私に背を向けた。
茜色に輝く夕日に包まれながら歩く日向くんの背中を、私は彼の姿が見えなくなるまでぼんやりと見つめていた。
今日も……
「あたたかいな…。」
そんな私の
いつもの日常。