「えっ⁉︎ 副社長との仲を疑われてる⁉︎ 」


何で⁉︎ …と佐藤ちゃんが不思議がる。

今朝、飼い犬との散歩中に偶然お会いして、その場面を羽田に見られてたみたい…と説明した。


「会社の副社長だって話せば良かったんじゃないの?」


当然のような言い方をする佐藤ちゃんの言葉に落ち込む。


「…そう言おうとしたの。でも、相手がスッゴく怖い顔して睨むから言い出せなくて……」


それでも何とか気持ちを奮い立たせて振り向かせようとしたのに、腕は振り解かれてしまうし……。



「……美結りーん、泣かないでぇ〜〜」



「えっ?私、泣いてなんかないよ……」



上を向いた途端、零れ落ちる涙に気づく。


「あれ…?」


おっかしーな…と呟きながら目を擦ると、涙は次から次に溢れてきて止まらない。


「あれ、どうしっ…た、だろ……止ま…ない……」



「美結りん……」


佐藤ちゃんが背中をさする。
その摩り方が優しくて、妙に胸に沁みてきてーーー。



(もうダメだ……我慢できない……)



「佐藤ちゃーーん……!」


バッとしがみ付いて泣きじゃくる。
私の嗚咽を聞きながら、佐藤ちゃんはペソを慰める私のように頭や肩をさすってくれる。


副社長の早見さんは、恋人同士のケンカは長引かせない方がいいと言った。
だから、今日にでも直ぐ連絡を取って、羽田の部屋に戻ろうと決めてたのに。


(何も聞いてくれなかった…。まるで拒否してるみたいな態度だった…)