「うん。結婚してもうすぐ2年になるんだ。この最近、仕事の都合で本社に戻ってきたんだけど、妻はどうもそれが気に入らないらしくて。この間からヘソを曲げて友人の家に引き込もってるんだ」


女心は複雑だね…と呟いてる。
何だか今の私みたいだと思うと、急に親近感が湧いてきた。


「私も今、彼氏と別居中なんです。何故だか知らないけど、急に『帰ってくんな!』と言われて。男心も複雑で謎だらけですね…」


お互いの顔見て笑いだした。


脚立の転落から救済してくれた人は、たったその一言二言のやり取りで私の気持ちを軽くした。



「じゃあ、お互い気持ちの分からない者の相手をしないといけないんだね。何より会話は一番大切かな。僕は本社勤務になってからこっち仕事が忙し過ぎて、ろくに話し相手にもなってなかったから」


「私は風邪と泥酔で、相手を振り回してばかりいたかも……」


この最近のことを思い返して自分の非を素直に認めた。


「だったら、謝るのは僕達が先の方が良さそうだね」


「本当に。その通りです」


「キャン!キャン!」


ペソまでが賛成するかのように鳴く。
その鳴き声を聞いて、早見さんは微笑みながら車を降りてきた。



「僕の妻はこのマンションの中にいるんだけど君の彼氏は?」


「自分のワンルームにいます」


「だったら僕が先に仲直りしてくるから、君は今日にでも彼氏と仲直りしなよ。恋人同士のケンカは、長引かせない方がいい」