「おはよう!」


路肩に停まってた車の中から声がした。
左側の運転席のドア越しに顔を覗かせた人は、副社長の早見さんだった。


「お…おはようございますっ!」


思わず起立の状態で立ち止まる。
リードの紐を引っ張られたペソは、「グッ…」と鈍い声を出して戻ってきた。


「君の犬?可愛いね」


ピューピューと口笛を吹かれ、ペソも嬉しそうに鳴き声を上げる。


「キャン!キャン!」

「ははは。人懐っこいね」


仕事へ行く前のせいか、普通のTシャツに薄手のジャケットを羽織ってるだけ。
それなのにモデルみたいに見えるってことは、やはりこの人がイケメンだからだろう。



「あの……早見さん、どうしてここに?」


「家がご近所なんですか?」と聞くと「ううん」と笑顔で返事がある。



「じゃあ何故?」


「君に会いに」


「えっ⁉︎ 」



「…と言うのは嘘で……」


ホッ……。


「…あっ、今すごくホッとしたろ。傷つくなぁ」


ハッ…!


「す、すみません…!」


恐縮しながら頭を下げる。
早見さんは「冗談冗談」と笑いながら手を振り、本当の理由を教えてくれた。



「妻を迎えに来たんです。この間から友人の家に泊まりに行ったまま帰って来ないから」


「奥様⁉︎ ご結婚してらしたんですか⁉︎ 」


うっそー、知らなかったよぉ〜。