「キャン!キャン!」


「うーーん…ペソ…うるさいよ………」


夢の中でも元気いっぱいだなぁ。羨ましい……。


「キャン!キャン!」


フンフン…と荒い鼻息がする。
生温かいものが顔に触れて、ビクッとして起き上がった。



「ペソ……」


尻尾をフリフリ。
小さな尻尾ははち切れそうなくらいに左右に振られてる。



「そっか。家に帰ったんだ…」


正確には、羽田に「帰ってくんな!」と言われたんだった。



「おはよ。ペソ…」


枕の上を行ったり来たりしてる体を持ち上げた。
小さな体はすぐに力を抜いて甘えてくる。



「ヨシヨシ…」


優しい毛並みを撫でながら虚しくなるって初めて。
たった2日くらいだったのに、妙に羽田の感触が懐かしい。



「会いたいな……って言うか、もう帰りたい……」



嫌な夢ばかり見てた。
胸苦しくてザワザワして、落ち着かない夢。

あの美人と羽田が手を組んで歩いてくの。
でも、それをどうしても止められないっていう嫌な夢。



「正夢とか……ないよね……」


独り言にも自信がなくなる。

迎えに来る気があるなら早く来て。
そうでなければこっちから帰る⁉︎


「帰ったら怒るのかな、羽田……」


グスン…と目に涙が溜まる。
その目元を舐めようとするペソの口元を押さえて、無理矢理にでも元気を出した。


「散歩行こっ!ペソ!」