本調子になってない指先には力も入りにくくて、脱衣するにも困難な状況になってしまった。


もがきながら背中の方は巻き上げた。
お次は頭…と抜こうとしたら第3の手が伸びてきた。



「…いい?脱ぐよ」


掛け声と共に、冷たくなった衣類は髪の毛の後ろをかすめて脱げていく。


「早く拭かないと!タオル貸して!」


持ってきたタオルでゴシゴシと背中を拭きだす菅野を見つめ、あれ…?と違和感を覚えた。


「菅野?っつか、美結……」


「ん?」


拭いてた手が止まり、横から顔を覗かせる。
きょとんとしてる眼差しはパチパチと2、3度瞬きを繰り返した。


「今日は逃げねーのか?」

「何で?」

「だって…俺、裸だし……」


上半身だけ、だけど。


「いつもなら走って逃げるとこだろ?寄らないで〜!とか言って」


いつまで経ってもキス以上のことさせてくんねーもんな、という嫌みを込めて話した。


ハッとした様子で菅野は俺のことを見下ろした。
胸の辺りからヘソの周辺までをガン見して、慌てた様に視線を逸らした。


「い…今そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!…は、早く拭いて服着ないと!」


さっと隠れる様にして脇や首筋まで拭き上げる。
その手が腰の方にまで下りて、パンツのゴムスレスレ辺りまでを拭いてくれた。



「後は自分でやって!私は何か作ってくるから!」


そそくさと立ち上がり逃げて行く。
急に意識をしたらしいその態度に、ププッ…と笑いを吹き出した。