無理だけどね……とため息。
まあ君というフィアンセを思い出したのか、口角の端を持ち上げた佐藤ちゃんは少しだけ残念そうに微笑んだ。


「美結りんは、今の彼氏に初めてをあげるの?だったらよく相手を吟味してね。納得いかない相手に簡単にあげちゃダメだよ。記念すべきことなんだから大切にね!」


経験者が言うと重みがある。

羽田を吟味しようにも、こう毎日すれ違ってばかりだと上手くいかない。


「でっ?昨夜はどこまでシたの⁉︎ キスマーク付けられてるくらいだから寸前辺りまで⁉︎ 」


ワクワクしてる。
ボールを投げて欲しいペソが、ウズウズしてる時と同じだ。


「お生憎様。なぁ〜んもなかったよ」


ガクッと脱力してる。
ははは…と笑う私に、「どーして⁉︎ 」と質問の嵐。


「いい雰囲気だったんじゃないの⁉︎ こんな痕付けられて…」


ここにもあるよ…と耳の後ろを指差される。
かぁーと歩くなる頬を感じながら、慌てて首を隠した。


「私、悪酔いしてたみたいなの……だから、何も記憶になくて……」


羽田はきっと酔い潰れてる私にこんなことをしたんだ。
どうしてか知らないけど、きっとからかい半分のつもりに違いない。


「美結りん、それって呆れるぅぅ」

「うん……。私も我ながらそう思うよ…」



ごめんね、羽田。
不機嫌なワケだよね。


「でも羨ましーなぁ。痕付けられるってことはそれだけ愛されてるってことでしょ?美結りんのことが好きだから、彼氏もそんなことするんだよね」