今聞いた名前のヤツは誰だ!と問い正したくても、とうに夢の中だ。


「…ったく、どんだけだよ。こいつ」


風邪引いて寝込んだかと思えば飲んだくれて帰ってくるし。
職場の緊急会議だと聞いてた割に、出てくる名前は男みたいだし。



「早見って誰だよ。俺の前で知らねー男の名前なんて呼ぶな!」


そのまま知らん顔しといてやれ…と、一瞬思った。
また風邪でも引けばいい…と思いつつ側を離れたけど、やっぱり止すか…と逆戻り。



背中を向けてる菅野の寝息は静かだ。

乱れた髪の隙間から見える白い首筋は、ゾクッとするほど色気がある。

山なりに盛り上がった腰から伸びてる脚は細くて、その首元には赤い石の付いたアンクレットが光ってる。


服を着てなきゃいいのに…と思いながら寄ってく俺の心に、ふ…と魔が刺した。


ベッドの足元に膝をつく。
そのまま横になってる菅野の首筋に近づく。

ドクン、ドクン……と胸が脈打ってる。
相手は眠り込んでるというのに、どうしようも抑えの効かない欲情。



(…こいつは俺の女だよな。だったら、好きにしてもいいよな…)



他の男になんか譲りたくない。

盗られるくらいなら、俺がこいつを女にしておきたい。

他のヤツとか目に入らないくらい可愛がって、メロメロにさせておく。



例えば、今、美結(こいつ)が眠り込んでても………。