「ドンペリ飲んだの!ドンペリ!!」


大虎になって帰ってきた菅野は、燥ぐ声でそう言った。



「美味しかった〜〜!サイコーだったよ〜〜!!」


赤い顔してるヤツに呆れながら、「はいはい」と相手する。

トロン…とした眼差しを俺に向けた菅野は、ニヤ〜っと笑って目尻を下げた。



「……羽田くん、カッコいいね……」


ギョッとするような褒め言葉を吐き、力尽きたように凭れる。
酒臭い女に褒められても嬉しくねーな…と思う心の反面で、どうしようもなく騒つく体。


このまま酔いに任せて襲ったらどうする?
今の菅野なら抵抗も何もしねーぞ、きっと。


(しねぇ…と言うよりできねー感じかな。手にも足にもまるで力入ってねーもん)


「ほら、しっかりしろよ」


腕を肩に回して立たせる。

何とか足を引きずりながらついて来る菅野の口からありえねー言葉が飛び出した。


「羽田くんもカッコいいけどぉ〜、早見(はやみ)さんもステキぃ〜」


(早見っ⁉︎ )


聞いたことのねー名前に振り向くと、うわ言のように呟いた菅野はくたっ…としてる。
自分が何を言ったかなんてまるで関知してなさそうな顔で、すぅすぅ…と眠り始めた。



「おいっ、こら!美結っ!起きろっ!!」


揺すっても顔を上げずにいるヤツをベッドの上に転がした。


「美結っ!おいっ…!」


「うーーん……」


メーワクそうに眉間にしわを寄せ、俺に背中を向ける。