間一髪…と、爽やかな笑顔を差し向けられた。
目がクラクラとしてボヤついた視界の中にいた人に向かって、一言お礼を言った気がする。


『ど、どうも……ありがとうございました……』



直ぐに羽田が割って入ってきて、レジしてって言われて……。



「もしかして……あの時のお客様……」



どんな服装してたかなんて記憶にない。
脚立に上ってる私の視線と大差ないくらいの身長してたことしか。


「古本屋は辞めたの?それとも掛け持ち?」


くすりと笑う顔が可愛い。
羽田とは違う意味で、この人もやっぱりイケメンだ。



「…先月の末からこちらで働かせて頂いてます。古本屋よりも時給が良いので……」


本音を語ると、佐藤ちゃんが「ダメダメ!」と袖を引っ張る。

言ってはいけなかったか…と反省してると、副社長さんから褒められた。


「正直で結構だな。同じ働くなら時給の良い方がいい!その選択、正しいよ!」


いかにも正論みたいに言われる。
嬉しいけど、そうでもない気がするのは何故なんだろ。


「今夜の対策会議に君たちも参加して欲しい。気の張らない場所でするつもりだから、座談会に出席するつもりで来て下さい」


「OK?」と英語で聞かれる。

「YES!」と即答する佐藤ちゃんの横で、「はい…」と小さく返事した。



「じゃあ決まり!場所は追って連絡するから!」


颯爽と次の店へ向かう。
イケメン副社長さんは、どうやらとてもお忙しい人みたいだ。



「カッコ良かったね〜〜!」


佐藤ちゃんを含めた女子全員が声を上げる。

その声を聞きながら、私は(早く羽田に会いたい…)と思ったーーーー。