一応の理解は示すけどシックリこない。
私が居ない所でどんな話をするつもり?


仕事のこと?
遊びのこと?
それとも、昨日会った元カノかもしれない人のこと?


(私と暮らしだしたことも話すのかなぁ。話したらまた余計な詮索されるから言わないかな……)


考え事しながら棚整理をしているうちに時間は過ぎてる。
気づくと店内は微妙なピリピリムードに包まれてて、一体何が起きたの…?って感じだった。



「申し訳ありません!」


店長の小嶋さんが謝ってる声がする。
薄い頭のテッペンを向けてるのは、スーツ姿の長身の男性に対してだ。


キレイに眉毛が整えられてる人だった。
顔の形はどっちかと言うと面長で、品のいい黒っぽいスーツを着てる。
ネクタイは控え目な色のパープル。
横顔の線がくっきりして凹凸があると言うことは、彫りが深いって証拠だ。




「あれが例の副社長さん…?」


ボソボソ…と佐藤ちゃんに耳打ちした。


「そっ。甘いマスクの下に隠されてるのは鬼の顔…と聞くよ」


「どうして店長が謝ってるの?」


「先月の売上高と在庫数に差があって、結構な被害損額出てるみたいなの」


「えっ⁉︎ と言うことはまた……?」


「うん。最近、ちょっとヒドいからね……」


私達が話してるのは横行してる万引き行為のこと。
この店は外の通りに面してるせいで、何かと被害が大きいんだ。


「対策はいろいろと練ってるけど、決め手に欠けてるから…」