いつもながらの血の気のない顔色で店内へ戻ると、店員たちが「キャーキャー」騒いでた。


「何事?」


お店のロゴ入りエプロンを身に付けながら佐藤ちゃんに耳打ちする。


「今しがた本部から通達があって副社長さんが支店の巡回に来るんだって。その人、結構なイケメンらしくて、だから皆が騒いでるってワケ!」

「へぇ〜、イケメン……」


どの程度?
羽田よりも上いく?

思わず浮かんでくる顔。
羽田の部屋に住みだしてまだ3日しか経たないけど、見れば見るほどイケメンだな…と思う。


母やおばあちゃんがニコニコ顔で迎えたワケも今は何となく理解できる。

ただ、そんなカッコいい羽田とどう見ても美人でも無ければ可愛くもない自分が一緒に住んでるのが不思議でならない。

これは本当は夢で、現実はまだ実家で暮らしてるんじゃないのかな……。



(……そんなワケないか)


休憩時間に送られてきたLINEを思い出してため息。
同棲相手の羽田は、『今夜は遅くなるから』と言ってきた。


『久しぶりにクマさん達と飲み!』

『遅くなるから先に寝てヨシ!』


カンパ〜イ!と片手にビールを掲げてるキリン。

羽田のLINEはどっか無神経でムカつく。

佐々木店長やクマさん達と飲みなら、私も誘ってくれればいいのに。



(知らない間柄じゃないのにさ……)


冷やかされるのがイヤなのかな。
あれこれ聞かれたりするの、羽田が一番嫌がるしね……。