そんな女を目の前にして菅野がいじけない筈はない。

別に菅野がブサイクとかじゃなくて、単純に梨花が周りとは別格なだけ。

それだけなのに、そんな女と付き合ってたことをあれこれ詮索されるのも嫌でごまかした。

その頃の話を聞かれるのも嫌だったし、それを話したからといって何かが変わるわけでもない。



今、俺が付き合ってるのは菅野美結だ。
アイツが居れば俺は最高にハッピーになれる。

遡れない過去を語るよりも、未来について語りたいんだ、俺は。



(……美結のヤツ、具合大丈夫かな…)


病み上がりのくせに買い物へ連れてけと言うから連れてったけど平気か?
明日から仕事復帰するって言うけど、ホントに行けんのか?



「美結…」


寝室の入り口から声をかけた。
新品の布団セットを床に敷き、潜り込むようにして寝てる菅野からは返事もない。


「もう寝たのか……早いヤツ……」


ガシッと前髪を掴みながら息を吐く。
布団の中で菅野が何を思っているかなんて、何も知らずにいた。