グチャグチャな気分のまま部屋に帰ると、羽田は昨日と同じように食事を作り始めた。


「羽田って、意外と器用だよね」


テーブルの上に乗ったチャーハンを眺めながら言う。

スープは昨日のリメイク版。
でも、昨日よりも味が染み込んでて美味しい。


「意外は余計だろ」


笑いながらパクついてる。
その笑顔が空々しく見えるのは、きっとさっきの美人のことが頭にあるからで……。



「……あのさ」

「んっ?」


スプーンの先を口に入れたまま羽田がこっちを向いた。

聞いてもいい?
何て言って答える?


「ーー私、明日から仕事行く。熱も引いたし、体も軽くなってきたから……」


意気地なし…と自分を罵る。
あの人が誰か聞くのなんて容易いことなのに聞けないなんてバカだ。


「ふぅん。まっ頑張れ」


無理すんなよ…って、その辺はいつもと変わらない。
ただ、なんとなく不安な気がする。
きっと、相手がすごく美人だったからだ。




(私とは全然違うタイプの人だったなぁ……。二重まぶたもクッキリとして綺麗だったし、肌も真っ白で女優さんみたいだった。切れ長の眼差しは凛としてる雰囲気だし、どこか迫力があるって言うか、オーラが漂ってるって言うか……)


考え出すとキリがないくらいいいトコしか思い浮かばない。
そう言えばスタイルも良かった気がする…と、よく覚えてもないのに思った。