ぐずってた泣き声が止んだ。

解熱剤が効いてきたみたいで、くぅくぅ…と寝息をたて始める。


「呆れたヤツ……」


寝返りを打って呟いた。
毛布の端から額だけを出して寝てる菅野は、鼻息が少し苦しそうだ。

ちらっと毛布を捲ってみた。

泣いた後の睫毛は濡れて、瞼は薄っすらピンク色に染まってる。
鼻の先は赤いまんまで、唇は半開き。


「ブサイクな顔……」


プッと吹き出しそうになる。
でも、やっぱり愛おしい気もする。


この顔を毎晩見て過ごせたらラッキーだと思う。
例えば、今夜みたいに泣かれても、その後でこの寝顔が見れるならいいか。


(あーあ、俺ってどれだけこいつのことが好きなんだよ…)


抱きしめてぇなぁ……。
でも、それしたら絶対目ぇ覚ますよな。


覚ましたらまた泣くのかなぁ。
それだけは勘弁だよなぁ。


そっ…と顔の側まで近寄った。
あどけない顔で眠ってる菅野の鼻息は、熱っぽくて湿っぽくてあったかい。

その鼻先に軽くキスしてみると、擽ったそうに顔を揺すった。


「俺じゃなくてペソが舐めたくらいの感覚なんだろうな」


犬以下の存在価値しかねーのかな俺は…。

そう思うと何とも情けない話。
兎にも角にも、せめてペソ並みの存在価値は欲しい気がする。


それからでないと、こいつには踏み込めねぇ。

先ずはそっから。

後は成り行き任せでいいや。



コツン…と額をぶつけて眠った。

眠りながら(俺の夢でも見やがれ!)と念を送った。