「布団から出るなっつたろ!これ以上風邪ひどくなっても知らねーぞ!」


むっとした顔で叱られる。
なんと言われてもいいけど、この状況はやっぱマズい……。


「だ、だって…これじゃ寝返りも打ちにくいでしょ……」


声は裏返ったまま。
鼻声で良かった。
一応変には聞こえてない。


「打ちにくいけど、たまにはいいよ。美結と一緒だとあったかいし…」


起き上がってた体を横にした。お風呂上がりの羽田の体は私の体温よりも熱い気がする。

昨夜はどうにも気になって眠れなかったボディソープの香りがして、余計に心臓が飛び上がった。


「一緒に暮らすとなるとベッドは考えもんだな…」


「えっ⁉︎ いいよ。別々に寝ても……」


お布団敷いて床に寝ても大丈夫!って言うか、是非そうして寝たい!


「バカッ!そんなの俺がヤダよ」


上を向いてた顔がこっちに向いた。
そのまま体ごと向きを変え、じぃーっと顔を眺めてる。


マズい…と思いながらも目が背けられなくなる。
どうすればいい?

背中向けるのも何だか変だし……



「……俺が何かするとでも思ってんのか?」


サラリと指先が髪の毛を触った。
ドキドキする心臓の音が耳奥で騒ぎ立ててる。

体が少し震えてる気がする。

緊張しすぎて、錯覚してるせいかもしれないけど………。



「…………っ…」


声が詰まって出ないなんて初めてだ。

やだ……。何で………。




「美結………?」


髪を撫でてた羽田が不思議そうな顔する。
そんな顔見せないで。
何だか………涙が…出そう…………