「な…何?」


ビクついた菅野は俺の顔を見上げ、ヒクッ…と頬を引きつらせる。



「暴れんなよ」


一応先に断りを言っとく。
それからヒョイッと体を持ち上げた。


足を掬われた菅野は驚いて、一瞬ぎゅっと体に力を入れた。
姫抱っこの体験なんてなさそうなヤツは、ぎゅっと閉じた目を開けて、何が起きたのか…って顔してる。

歩き出した俺に気がついて、やっぱりぎゃーぎゃー騒ぎ始めた。


「お、下ろして!自分で歩けるからっ!!」


真っ赤な顔して言うセリフかよ。
つーか、もうベッドに着いたし。



「ほらよ」


ストンと背中をベッドに着けた。

間近に見えてる菅野の顔は、熱っぽさも通り越した様な赤さがあった。


(このままベッドに押し倒したらどんな展開になるんだろ……)


こいつが風邪なんて引いてなかったら、絶対にそうするとこだけど………。



「さっさと中入って寝ろよ。俺は風呂入ってくるから」


手離してやるとホッとされた。
彼女にここまでホッとされるなんて、俺もつくづく情けねーヤツだよ……。


「薬飲んどけよ。あっ、それから俺もベッドで寝るから場所空けとけな!」

「えっ⁉︎ 」


何で…って顔するな。
ウチにはそのベッドしか布団がねぇんだ!


「お互い風邪引くのなんか懲り懲りだろ!明日になったら布団一組くらいなんとか準備できるから、今日は狭いけど2人で寝よっ!」