警戒心丸出しの猫みたいな顔してる。
飼ってるのは犬のくせに、菅野自身はまるで猫タイプ。

いつまで経っても尻尾を振らねぇ。
こっちの気も知らねーで、振り回してばっかいる。


「お前さっき休みがどーの言ってただろ!何が言いたかったんだよ!」

「あっ、それは……」


急にしおらしくなるなよ。何だよ、その豹変ぶりは。


両手の指絡めて目線を彷徨わせた。
少しだけ突き出た唇に吸い寄りたくなってくる。


「…久しぶりに休み重なったから、どっか行かないかなと思って……」


尖った口先から意外な言葉が飛び出した。


「何だ。デートの誘いかよ」

「うん…。まぁ……」


誘いって言うより誘ってくれって感じか?
郊外店の店長に就任してからこっち、前みたいに仕事場で会わなくなってるからな。


「いいよ。どっか行きたいとこ考えとけよ」


ドライブ好きな俺が連れてける所なら連れてくし…って、甘いな、俺は。


…でもさ。



「うんっ!!」


嬉しそうな顔されると拒否られたショックも吹っ飛んでくんだよ。ついでに言うなら仕事のストレスもな。


「ありがとう!羽田………くん…」


『くん』の付け方がいまいち犬の鳴き声みたいでヤダけど、まあ苗字呼び捨てよりマシか。


「どこ行こうかなぁ〜。海?それとも山?あっ、ショッピングもいいよね。映画いいのやってないかなぁ〜」


上目使いであれこれ考え始めてる。