横って言っても床だけどさ〜〜って、そんなの耳に入ってるワケないか。


「へぇ〜〜!」


何だか感心した様な声が返ってきた。
半オクターブくらい跳ね上がった声で、母は私にこう言った。


「熱下がるまで帰らなくていいからね!おばあちゃんや私にうつされても困るし、羽田君に看病してもらいなさい」

「えっ⁉︎ で、でも羽田は仕事が忙しくて……」


そんな世話かけられない…と反論する間もなく電話は切れてしまった。
かけ直したところで出ないのは必須だと思ったし、生憎そんな元気もない。

フラつく足元でトイレに起きてみると、キッチンの流しの上には羽田が食べていったと思われる朝食の残骸(サンドイッチの空き袋)が置いてあった。


「一応食べれたんだ。……良かった……」


ホッとしながら冷蔵庫を開けた。

開いて一番最初に目についた棚の真ん中に、紙パックに入ったイチゴラテが置いてある。


『飲め!』


命令形のメモが貼られてる。
きっと仕事に行く前にコンビニに寄って、羽田が私の為に置いていってくれたんだ。



(優しいな……意外に……)


感心しながら少しだけ飲んで横になった。
口の中に残ったイチゴの風味に癒されながら、くぅ…と眠り込んだら夜だった。



冷んやりと冷たいものが額に乗って目を開けると、視界の中に佇む羽田の姿があって……。


「熱どうだ?」


顔が近寄ってきておデコがくっ付いた。


「まだ少しありそうだな……」


そう言って離れていく。