スプーンの先を突っ込まれた。
程よく冷めたスープは、つるんと喉を潤していった。


「…美味いだろ?」


自画自賛⁉︎ 確かに変な味じゃないけど……。


「…味、分かんない……」


鼻づまり酷くて無味無臭な感じ。
ただ喉越しだけは爽やかで気持ちがいい。


「張り合いねー奴……」


大きめなマグカップの中にスプーンの先を突っ込んで二口目を掬い出す。
その先端をこっちに向け、「ほらっもう一口!」と口を開けた。


「あーん!」

しかめっ面で食べさせられても味なんかしないよ。


そもそも私が、何でまだここに居るかと言うとーーー





母から電話が掛かってきたのはお昼の12時を回った頃だった。
解熱剤の効果で少しだけ熱の下がった私は、羽田がローテーブルに置いてったケータイに手を伸ばした。



「もしもし……」


グズッ…と鼻の詰まった声で出ると、母は面白そうな口調で話しだした。


「羽田君から電話もらったわよ〜〜!風邪引いて熱あるそうじゃない!平気?」


「……なワケないでしょ……」


気分最悪……と付け加えた私の声を聞いて、電話口の母は若干呆れ気味に囁いた。


「彼氏ん家に泊まって風邪引くとか……あんた達一体何したの⁉︎ 」


明らかに何かを疑ってる感じ。
……と言うか、絶対にエッチしたと思ってるよね。


「何もしてないよ…。羽田は熱あって寝込んでたし、私はその横で寝てただけ!」