ブルッとする様な寒気に襲われて「くっしゅん!!」と勢いよくクシャミが出た。



「38度7分…」


目の前にいる羽田は不機嫌そうに体温計の数値を読み上げた。


「はっ……くしゅん!!」


38度7分⁉︎ と驚きかけて、もう一度クシャミが出る。
一度出始めたら止まらなくて、そのまま何度か続いてしまった。


「もういいから大人しく寝とけ!風邪の菌ばら撒くな!」


ほらっ…とティッシュボックスを放り投げる。
手元に届いたそれから一枚取り出し、グスグスと鼻水を拭き上げた。


「お前、今日仕事休め。そんなので行っても仕事になんねーだろ」


呆れるような顔で言われる。
私が毛布も掛けずに眠ってたことにかなりご立腹の様子だ。


「でも……」


言い訳じみた言葉も言わせてくれそうにない雰囲気にぐっと息を呑み込む。
羽田は乱れた前髪を掻き上げて、はぁ…と深く息を吐いた。


「とにかく美結のお母さんには俺から連絡しとく。解熱剤はあるし、取りあえずそれ飲んで寝とけ。いいか、今度は布団の中から逃げんなよ!熱上がっても知らねーぞ、俺は!」


言い捨てるようにして部屋から出て行く。
その後ろ姿を布団の隙間から眺め、ショボン…と肩を落とす。



(あーあ、大失敗。完全に怒らせちゃったよ……)


ブルブルする悪寒に耐えながら布団の中に潜り込む。
昨夜は緊張して眠れないと思ってた汗のニオイに、今は逆に癒されてる。