「そんなことさせられっかよ。風邪引かしたら俺のメンツ丸つぶれだろ…」


信用されてんのに困るだろーがと話すと、ブンブンと勢いよく首を横に振られた。


「だいじょーぶ!体力には自信あるから!」


風邪も滅多に引かないし…って、何の自慢話だよ。


「ここでいいよ!さ、寒くないし!」


困り顔して拒否んなよ。こっちが自信無くすだろ。


(そんなに警戒しなくても何もできねーのに……)


好きな女目の前にして戦闘意欲も沸かねーなんて初だよ。

相手が菅野だから……じゃなくて、やっぱ体がダル重だから。




「……好きにしろよ」


やってらんね…と背中を向けた。
恋愛処女の菅野は、狼になりきれねー俺に安堵したみたいだった。


「風邪引くなよ」


布団の中から毛布をひっぺ返して放り投げた。
受け取っただろうと思われる菅野は、ほぅ…と小さく息を吐く。



「………美結」


胸を撫で下ろしてるだろうヤツに声をかけると、驚いた様な声で返事があった。


「は、はい…!」


妙だなと思いつつ向きを変えると、抱きかかえる様にして毛布を掴んでる菅野と目が合った。


「悪いけど朝起こして。風呂入って行くから早目に頼む」


「う、うん。分かった…」


こくこくと小さく頷く姿を見ながら呆れる。

俺の部屋着を着てるのはいいけど、…何だ、その捲り上げた袖と裾は。


「…色気も何もねーな……」


せめて『萌え袖』くらいしとけよ。
定番だろ。



「…っつーか、まぁもういい。おやすみ…」