それを少しでも軽減したくて、買ってきたフリージアの香りを吹き付けた。
耳たぶの裏側と首筋は勿論、胸元と背中にも少しずつ。
蒸気と一緒に上がってくる花の香りに包まれてから、やっと少しだけホッとできた。



洗濯乾燥機の中から乾いたばかりの羽田の部屋着を取り出して着た。
萌え袖にならないようわざと袖と裾を大きく折り返してみる。


(よしっ!これで何とかオッケー!)


スキンケアを済ませて、ドキドキ鳴る心臓の音を抑えるようにしながら部屋へ戻った。

1LDKの寝室からはテレビの音が聞こえてる。
笑い声は聞こえないけど、羽田はきっと起きて待ってる筈だ。



(何て言って入ればいい……?普通にお風呂お先に…って言う?)


頭の中を真っ白にしながらドアを開け、隙間から中の様子を伺った。




(えっ……?)


ローテーブルの前に座り込んでる筈だと思ってた羽田は、ベッドの中に潜り込んでる。
しかも私が近寄っても目も開けず、芯から眠り込んでるようだ。



「なんだ………心配して損した………」


ホッとしながらも呆れるのは何故だろう。
羽田が私のことを求めてこないことに、多少ガッカリしたからだろうか。


「私ばっかドキドキしてたのかな。やっぱり……」


揺すっても起きそうにない雰囲気を前に顔を覗き込んだ。
朝も同じ様に、水をあまり飲まずに眠りに引きずり込まれていった。