ピタッと止まる水音に反応して鼓動が跳ね上がる。
それと同時に私の背後にいる人は、熱い息を吐きだした。



「……怒るなよ」


肩にかかる呼吸にビクッとなりながら少しだけ振り向くと、羽田は項垂れていた顔を上げた。


「俺、美結と一緒にいたいだけなんだから……」


『熱があるから気弱になってるだけだと思う』


そう言ってやりたいのに、声すらも出せないくらいドキドキしてる自分が情けない。
完全に彼の方に向き直って、額を彼の鎖骨に押し当てた。



「…私だって羽田といたいよ……」


当然じゃん、好きなんだもん。
でも……。


「だけど、いきなり結婚はないと思う……」


ムードもへったくれもなくてごめん。
今一つ実感湧かないのも、きっと私がガキ過ぎるせいだね。


「……だったらせめて一緒に暮らさね?今のままだと俺達、今度いつまたゆっくり会えるか分かんねーし」


ーーって、そりゃそうだけどぉぉぉ。


「……親に反対されっかな」


「いや、多分それは絶対にない……」


「えっ!」


ぱぁっと明るい表情見せられた。



「えっ……」


何その顔?
もしかして今の一連の行動、全部演技だったとか……?


「あの、……羽田…くん?」


さん付けは卒業した。
恋愛小説をバイブルにするのもやめてるし、今日はたまたまバッグの中に入れっぱなにしておいた本を読み返しはしたけど……。