「……お前、可愛くねーな」


まあ今に始まったことじゃねーけど…って、ほっといてよね!


「羽田も相変わらず分からず屋だよ!」


言い返して背を向ける。
キッチンの流しに皿を置いて、ガチャガチャと乱暴に洗いだした。




(何よ。いきなりプロポーズなんかして。誰もそんなの望んでなんか無いのに……)



やっと久しぶりの休日が重なって喜んでたのに熱なんか出して。
それならそれでもいいけど、せめてノンビリDVDでも見ようかと思ってたら眠り込んでしまって夜だし。
マトモな料理は作れなかったし、羽田には余計な気遣いさせちゃうし……。


あれこれと思い浮かぶことを連ねてみる。
羽田が私に向けて言ったプロポーズの言葉は、熱を出して休日をダメにした理のようにしか聞こえなかった。


(本当は少し嬉しかったし、まさか言われるとも思ってなかったから面喰らったけど……)


今更ながらドキドキしてくる。
その私の背後に近付いてきた人は、きゅっと後ろから腕を腰に巻きつけてきた。
コトン…と気だるそうに熱を帯びた額が右肩に降り注ぐ。
柔らかそうに見えて意外と硬い髪の毛の先が、チクチクと首筋を刺した。



「美結……」


色っぽい声で名前を呼ばれる。
キスしようとする前の羽田は、いつもこんな甘い声を出す。


「な…何?」


ドキドキしながらも洗い物の手を止めないでいると、後ろから伸びてきた腕が水道のコックを引き上げた。