「……佐々木店長に見込まれた俺としては、今の店舗を潰さないようにするだけだよ」



拗ねた感じの言い方をして、羽田は黙々とリゾットを食べ進める。
実際はそんなに美味しくもない料理を食べ終えて、パチンと手を合わせた。



「ごちそーさん!」

「お粗末さま」


いつもおばあちゃんが私に言うセリフを羽田に言った。
その言葉を受け止めて、急に思い立ったように呟いた。



「お前、意外と主婦向いてそうだな」


「えっ?」


カチャ…と、皿を持つ手から力が抜けた。
そんな言葉を言われるとは思わずにいたから驚いて顔を見つめ返すと、羽田は軽く咳払いをして見せた。



「なぁ…俺たち結婚しねぇ?」



「……は?」



聞きづてならない言葉を耳にしたような気がして、もう一度耳を傾ける。
照れた面差しを向けた羽田は、「だから…」と念押しするように繰り返した。



「結婚、しねーかって言ってんの。俺と!」


「…何で?」


思わず聞き返してしまった。
まさか、こんな風にプロポーズの言葉を耳にするとは思ってもいなかったから。


羽田の顔が呆れてる。
呆れてるのは分かるけど……


「今はそんなの考えたこともないよ」


お断りします…と返事した。
ガックリと項垂れるわけでもなく、羽田は「やっぱりな…」と小さく呟く。


「お前のことだからそう言うんじゃねーかと思った。予測通り。勘的中!」


偉いぞ俺!…って、自画自賛なの?それ。


「何?今のジョークか何かなの?」


もう一度確かめた。