「帰ってくんなって言ったじゃん。話も聞かずに逃げたじゃん……!」


泣きながら責める菅野の言葉に胸が痛む。

確かにこいつを振り回してるのは俺だ。
だから、責められても仕方ねーけど……。


「俺にも都合ってもんがあるんだよ」


菅野と居るとどうしようもなくなる。
菅野が欲しくなって、どうしようもない気持ちが高まる。

だからって離れていたくもない。

でも、それをどうやって説明すればいいのか……。



「とにかく帰るな。犬連れて歩けるような足取りでもねーだろ」


あんなガバガバ飲みやがって、完全に足取られかかってるじゃねーか。


「あ、歩けるもん!」


そう言いながらもフラついて、俺の方に凭れかかる。


「ほら、やっぱ無理だ…」


体を起こすと目の前に菅野の唇。

ヤバッ…



「羽田くん……私のこと嫌いなの……?」


ドギマギしてる俺の耳に、菅野の声が弾ける。


「私……どうすればオッケー?……」


酔いが回った菅野は、涙を浮かべた瞳で俺のことを見つめる。


そんな顔するな。
抑え効かなくなるから……。


「美結……」


ダメだ…と思いながらも吸い寄せられる。
顎に手を掛けた途端、美結の瞼が閉じられた。



ドキン…!と大きく胸が震える。


ぎゅっと抱き寄せてしまう俺に驚いて、菅野の抱いてたペソが声を上げた。



「キャン!キャン!」


ハッとして体を引き離した。