「あいつ、ホントにいつまで経ってもガキだよな……」


Tシャツの袖に腕を通しながら笑う。
さっきより少しだけ温もってきた体温を感じながら、急いで下を履き替えた。


脱いだ服を洗濯乾燥機の中に放り込んでスイッチを入れる。
回転しだすと同時に出始めた水の音を聞きつけ、菅野が慌ててやって来た。



「そんなこと私がしてあげるから横になって!また熱が上がると仕事行けなくなるよ!」


意外に甲斐甲斐しいこと言うじゃん…と感心しつつ部屋に戻る。
さっき見つけた小説を取り上げ、ベッドの中に潜り込んだ。





『……結婚しよう』


10日間の同居命令を下した上司は、部下の主人公にそう言った。

同居生活を余儀なくされ続けていた部下は驚いて、それでもそれを受け入れる。


何て安直な発想なんだ…と呆れながら、相変わらずこんな本を読み続けてる菅野を呆れた。



(…あいつ、結婚願望でもあるのかな……)


付き合い始めて3ヶ月。
キス以外に進展のない俺達の関係は、今や中坊以下だと言ってもいい。


でも、例えば結婚しようと俺が言ったら、菅野も次のステップへと進んでもいいと考えるのかもしれない。


(相手が処女だと思うからあんまグイグイ行っても…と遠慮してたとこもあったけど、それがキッカケで前に進めるなら、まあオッケーかもしれねーけどな…)



正直なところ結婚なんてまだ先でいいと思ってた。
相手が菅野になるかどうか、そんなとこも不透明だったけど。