「あのさ、」


けんちゃんが口を開く。

きょとんとした顔で私はけんちゃんをみた。


「あの時のサヤの夢が変わってないなら、」


ゆっくりと、正確に、言葉を選びながらけんちゃんは話す。


「諦めないほうが良いと思う」


けんちゃんは続ける。


「中学の時、お前ミスI中に選ばれただろ?」


I中とは私とけんちゃんの出身中学だ。

毎年9月に行われる文化祭で、3年生の女子の中からミスI中を選ぶ。文化祭前に投票を行い、上位10名がみんなの前で特技を発表して、全校生徒と一般のお客さんが投票し、ミスI中を決める。

私は去年なんとミスI中に選ばれてしまったのだ。
上位10名に入っただけでもびっくりしたのに、即興でやった、ピアノと歌が評価されたのにびっくりした。確かに歌は多少自信あるけど…まさか!?って感じだった。


「あの時、お前にはそういう才能があると思ったんだよ」

「えっ…!?」


けんちゃんから初めて聞いた言葉。私は驚きを隠せなかった。


「ド素人の俺が言っても、説得力ないけどさ」


けんちゃんが私をじっと見つめる。


「伝えたいんだろ?お前の思いを」