朝から気分がすっきりしなかった。

原因は昨日のサヤとの会話。


サヤが夢に一歩近づいたことは誰よりも嬉しいはずなのに……



“雄一君”



その言葉が頭から離れない。

軽い嫉妬心か?

つーか何に嫉妬する必要があるんだか……



数学の参考書に目を通しながら、俺はため息を吐いた。



サヤが話しかけてきた。



思わず冷たく返す俺。



そのまま何も言わなくなるサヤ。


気まずくなって俺は参考書に目を移した。

続く沈黙。

何やってんだよ、俺……







もうやめよう。



俺は……



サヤに―――





「頑張れよ」



「えっ……?」



突然の言葉にキョトンとするサヤ。

相変わらずコロコロ表情が変わる奴だな。



「ずっと前からの夢だろ?
芸能人になるの」


「うん」


「せっかく一歩前進したんだ。大変だろうけど…お前らしくやってこい」



俺は


サヤに―――誰よりも




輝いててほしい―――



「俺は、お前を応援するから」