私が歩いていると、見慣れた後ろ姿を見つけた。
同じ学校の制服を着た男子。


「けんちゃん!おはよう!!」


けんちゃん――池谷健介は振り返った。


「なんだ、サヤか」


ぶっきらぼうに言い返すけんちゃん。
私はむぅっとふくれた。


「なんだって、冷たいなぁ」

「15年間も一緒にいるとどうしてもなれる」

「なにそれ!慣れた人にはつめたくするの??」

「別に冷たくしたつもりは…」

「いいもんだ!!むぅー」


わざと膨れっ面してみる。けんちゃんは少しあわてた様子で私を見ていた。


「悪かった。そんな顔すんなよ」


困った顔のけんちゃん。
私は笑顔で言った。


「別に、気にしてないよ」


「全くお前は…」


けんちゃんが苦笑する。
そうこうしているうちに、私たちはバス停に着いた。