長い茶色の髪を耳にかけた先輩は、
興味深々にこっちを見ている。しかもずっと。






「…何ですか?」






さすがにこんなに見られては気を紛らわすこともできない。
かと言って、さっきから変に先輩を意識してしまうからか
先輩の目線を受け止めることもできないのでそう言えば







「いやー、綺麗な髪だなって思って」

「…はい?」

「まっすぐで艶もあって、女の子みたい」






そう言ってからニシシと笑った先輩に
それ褒めてませんよね、なんて呟いて。

褒められて嬉しくないことはないのだが
女の子みたい、なんて高校2年の男子に言うことなのか
というのが本音なわけで。






「褒めてる、褒めてる」






そう言ってまた笑う先輩の顔から
目を離すことができずにいれば、きょとんとした顔で







「ん、何かついてる?」






見当違いな勘違いをして慌てて鏡を出す先輩。
幼いようにみえてもやっぱり年頃の女子ということは変わらないのか
なんてひとりで苦笑して。






「いや、何でもないですよ」

「へ、そう?」







そう言えば、鏡を取り出そうとしていた手を止めた。

安心したその顔には、またふにゃりとした笑顔が浮かんでいて
俺の心をぎゅっと掴む。






「お待たせしました」






運がいいのか、どうすればいいかわからなくなったその瞬間。
店員の人が見計らったかのように注文した物をもってきた。

それに安心した俺はホッと息をついたのだった。