先輩は俺の提案に乗って、学校を出てすぐのカフェに来た。

モダンな感じで落ち着いているそのカフェに
目を輝かせる先輩を尻目に窓際の席に向かう。







「よかった、断られたらどうしようかと思った」







なんてふにゃっと笑った先輩に、
なんで自分でも言い聞かせてまで来たのかは
わからないんですけどね、なんて心の中で返しつつ







「ちょうど暇だったし、
先輩と話してみたいなって思ってたんで」







今まで何度と使われてきたであろう
使い古されたような言葉を返す。

今日が終わればもう関わることもないだろうし、
カフェに来たのはほんの気まぐれだなんて言い聞かせて。







「ホントに!?
あ、えーと…名前は?」







パッと笑顔を浮かべたかと思えば
名前がわからないと眉を顰める先輩。

コロコロと変わる表情に思わず吹き出して笑えば







「あ、やっと笑った!!
そっちの方がいいよ?壁がある感じだったし。
さっきまでより、ずっといい」







なんて言うもんだからびっくりして。
壁を作っていたなんて言われるのは初めてで
どう反応すればいいのか戸惑っていれば







「さっきみたいに素の自分でいればいいんだよ」







そう言ってまた笑った先輩は何故かとても綺麗に見えて
さっきまでとは違いまともに目を合わせられない俺は







「如月隼人です」







ぼそりと呟くようにそう言ったのだった。