自室へ戻りベッドに崩れ落ち目をつぶる。


目をつぶれば長い茶色の髪と大きい目、
いたずらっ子のような彼女の笑顔が浮かんできて慌てて目を開く。







「なんであんな人…」







強引な彼女のことを思い浮かべる要素はなかったはずだ。
少なくとも、今は。
それでも浮かんできた彼女を“気になっている”なんて
認めたくなくて無理にでも頭を切り替える。


明日小テストやるって言ってたから軽く復習しておこうか、
なんて開いたカバンの中には赤い折り畳み傘。







「マジで勘弁…」







放課後、俺の元に現れた正体不明の強引な彼女に
ここまで頭を占領されるなんて、と
集中できそうにもない勉強を諦めてベッドに戻る。


第一この傘、どうやって返すんだよなんて呟きながら傘を見ても
漫画のように名前が書いているはずもなく。
結局何もわからないままで、返す術を悩まずにはいられなかった。







「あー、くそ」







なんであの時「風邪をひいちゃうでしょ」と言って
いたずらっ子のように笑った彼女の笑顔が忘れられないのだろう。


別に大して可愛いわけでも、綺麗なわけでもなく
ただのお節介で強引な人。
そんな人どこにだっているのに何故頭から離れないのだろう。