母と向き合って食べる夕食は3ヶ月ぶりだが、
誰かが作った料理を食べるのも同じく3ヶ月ぶりだった。


自分で作ってもほとんど失敗するので
基本はコンビニかファミレスで済ませてしまうことが多いのだ。







「おいしい?」

「うん」







たったそれだけでも母は嬉しそうに頷いて、
それから自分もナポリタンを頬張った。


口の周りにはソースをつけていて
本当に40代かなんて疑いたくなるぐらいだが、
料理の腕前は確かだった。







「で、隼人は彼女とかできたの?」







興味津々でそう訪ねてくる母に
またその話か、なんて小さく呟いてから







「いないってば、」







なんて言えば







「えー、つまんない!!」







なんて駄々をこねる母。


女子中学生か、なんて突っ込みたくなるが
無駄だと言うことがわかっているので諦める。







「じゃあじゃあ、気になる人は!?」







それでもめげずに聞き出そうとする母の言葉に
ふと浮かんだのは放課後に会った彼女のこと。







「…」

「あ、いるんだ!?」







言葉を詰まらせれば喜ぶ母。
そんな母をよそに彼女のことを振り払う。


なぜ彼女が出てきたのか。
それは強引だったのが印象的だっただけで、
決して気になるとかではない。







「そんなんじゃねーって」







そう母と自分に言い聞かせて、麦茶を一口飲んだ。