『席に着け~!』
先生がみんなに声にをかけると
恵里奈は
『また後でね!』と言って
自分の席に着いた。
それから先生は長々と話をすると
教室を出て行った。
その日の放課後。
私は今日こそちゃんと話し合おうと思い
和樹を中庭に呼んだ。
『何?』
『あのさ、この前の話だけど…
和樹が見たのはバイト先の先輩で
付き合ってるとか
そういうのじゃないから…』
私が話し終わると和樹は
『もぅどうでもいいよ!
『お前、週末誘っても
断ってばっかでつまんねぇから
俺、他の奴と付き合う事にした!』
と言った。
考えてみればそうだよね…
私と和樹は
付き合ってるって言っても口だけで
学校以外で会った事ない。
『そうだよね…
分かった!
幸せになってね!』
私はこの時
本当に和樹の幸せを願った。
『お姉ちゃん、暑いね…』
『暑い時は「寒い!寒い」って言えば涼しくなるよ!』
『本当?
寒い寒い寒い寒い!
お姉ちゃん、全然涼しくならないよ~!』
季節は夏。
和樹と別れて半年以上の月日が流れた。
あれから私は和樹と一度も口を利いていない。
そして瞳先輩とも一度も口を利いていない。
和樹の新しい彼女。
それは私の憧れていた瞳先輩だったから。
『お姉ちゃん
美穂ちゃん、お母さんに
ピンクのランドセル買ってもらったんだって!
優奈も欲しい!』
美穂ちゃんは優奈の友達。
優奈はあと半年と少しで保育園を卒園して
小学生になる。
ランドセルか…
『優奈は何色がいい?』
『赤!』
『赤か~…今度買いに行こうね!』
ハッキリ言って
ランドセルを買うお金はない。
いざとなったら
私が使っていたランドセルを使う事も出来る。
だけど新しいランドセルを
買ってあげたい。
私はその次の日から一週間
学校を休んだ。
理由は1つ。
お金を稼ぐ為。
あと半年間で
ランドセルや制服を買うお金が必要になる。