『でも…』

『気にしなくていいから!』

私の言葉は店長に遮られた。

『ありがとうございます。』

私は深々と頭を下げた。

『じゃぁ、表で待ってるから!』

そう言って高橋先輩は店を出て行った。

私は急いで帰る支度をして表へ出た。


外に出ると先輩は寒そうにしていた。

『すいません…』

私が謝ると先輩は

『大丈夫!大丈夫!』と笑った。

それから先輩はアパートまで送ってくれた。

『ありがとうございました!』

『またね!』

先輩は笑って帰っていった。


私は先輩が見えなくなるまで見送った後

部屋へ入った。

そこでは優平と優奈が笑顔で眠っていた。

その笑顔を見るとつられて笑顔になった。

私は2人を起こさないように

お風呂に入り

2人の横に寝転がって眠りに就いた。


次の日、いつも通りの朝を迎えた。

今日はチャイムが鳴る1分前に教室に着いた。

ギリギリセーフ!

だけど、そんな事より

和樹の事の方が気になる。

昨日、嫌な雰囲気で別れたまま

一言も話をしていない。



『和樹、待って!』

放課後、教室から出て行こうとする和樹を呼び止めた。

『何だよ?』

和樹は不機嫌そうな顔で振り向いた。

『昨日はゴメンね…』

私が謝ると和樹は

『別にいいよ!もう俺には関係ないし!』と言った。


『え…?』

私は和樹が言った言葉の意味が分からなかった。

『昨日の夜、お前が男と楽しそうに歩いてるトコ見た!

俺の誘い断り続けたのも

そいつに会う為だろ!?

お前に裏切られてるとは思わなかったよ!』

和樹はそう言って教室を出て行った。


違う…

違う…

裏切ってなんかない…

高橋先輩はただの先輩で

和樹からの誘いを断ったのは

先輩に会う為じゃない!

どうやったら伝わるんだろう…

何から伝えればいいんだろう…


ーーーーーーーーーーードン・・・・

いろんな事を考えながら歩いていると誰かにぶつかった。

『すみません…』

謝りながら顔を上げると

そこにいたのは瞳先輩だった。

『先輩…』

『優香、どうしたの?

悩み事?話聞くよ!』

それから私は和樹との事を話した。


先輩は頷きながら聞いてくれた。

そして笑って

『大丈夫だよ!

きちんと話せばきっと分かってくれるから!』と言った。

先輩の笑顔を見ていると元気が出てきた。

『先輩、ありがとうございます!

私、頑張ります!』

そう言って私はその場を立ち去った。