その後のことはあまりハッキリとは覚えていないけど
どうやら誰かがすぐに救急車を呼んで居てくれたらしく、到着した救急車に俊は運ばれていった
彼が担架に乗せられている時も私の中ではずっと嫌な予感が止まることはなくて
「大丈夫か、四宮」
体の震えを近くにいた神原部長に心配されるほどだった
『私は大丈夫です、ただ...俊が...』
「あの病院ならここからそう遠くない、俺らもすぐに向かおう」
『はい.....』
そうだ、今すぐ私も向かわなきゃいけないのに、頭では分かっているのに体はいうことを聞かなくて
病院について、その時の彼の容態を見るのが怖くてたまらないのだ
「大丈夫だよ。あんなに血が出てたのも目の上とかが少し切れただけに違いない。それに、敷島は丈夫なのが取り柄みたいなもんだろ?」
そう言って励ましてくれる部長の言葉でじんわりと涙が滲んでくる
そうだよ、いままでだって俊が風邪ひいたのだって見たことない、きっと大丈夫
『ありがとう、ございます...』
部長の優しさに先程より心が軽くなり、私たちはすぐさま彼のいる病院へと向かった
この数時間後、更なる絶望に襲われるともしらずに
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「俊!!」
病院に駆けつけて私たちは、既に治療が終わったという彼の元へ訪れた
真っ白な病室のベットの上に横たわる彼にいつもの元気さなんて微塵もみえなくて、本当に私の知っている俊なのかも分からなくなる
「傷としては目の上を少し切っていまして、数針縫っただけなのですが....」
部長の言う通りだった、そこでようやく私はホット胸をなで下ろし横たわる彼の元へ駆け寄る
すると同時に彼の目が開いた
『良かった!俊、気がついて....』
その時、私は妙な違和感に襲われた
彼の目が、いつもとは違う。こんな冷たい俊の目は生まれて初めて見る
「俊......?」
小さく彼の口元が動いた
「あんた、誰?」
その時私は全身から力が抜けていくのを感じた
「頭を強打しており、軽い記憶の障害.....つまり、俗に言う記憶喪失が起きている可能性があります」
冷たい病室に静かに響いた医師の声は私の頭をするりと抜けていく