ススー

と襖の開く音が真横から聞こえた。



「あら、千代ちゃん。起きていたのね」


開いた襖から顔を出したのは、今お世話になっている団子屋の奥さんだった。



「あなた、急に居なくなっちゃうからびっくりしたのよ」


奥さんは私がいなくなった後どれだけ心配したかと泣きながら切々と語ってくれた。
そんなに、私のことを心配してくれた奥さんに私もつられて泣きそうになってしまった。

「ああ、そうそう!意識のないあなたをそれはもう綺麗な男の人がおぶって来た時には驚いたものよ」

もしかして、私を助けてくれた人だろうか?

「そんなに、格好良かったのですか?」

「あら、やだ!あなたその人の顔を見なかったの?」

「はい。ちょうど逆光で見えなくて…」

「そうだったの…。そうね、うちの店の常連さんの沖田さんくらい格好良かったわ。まあ、雰囲気は全然違うけどねぇ」

沖田さんと同じくらい…?
確か、沖田さんはこの甘味処のお菓子を1日で全種類制覇した凄い人だ。
ちょうど、私もその時居合わせたから覚えてる。うん。人間って凄いわ。
私も人間だけど、美男子ってだけで凡人には出来ないことを成し遂げてしまうんだから。