「芽依子サン?」



「はい?」



「お菓子、何が好き?」



「“かりんとう”です」



「おっ。渋いッスねぇー」



今日も俺は彼女と手を繋いで歩く。



でも、今日はいつもとは少しだけ違う。



俺が差し出した手に、彼女が手のひらを重ねてる。



左手の熱が、ほんの少しだけ気恥ずかしい。



「先輩は“かりんとう”好きですか?」



「……嫌い…デス」



「それは残念です」



やっぱり今日はいつもとは違う。



「でも…」



「ん?」



「でも、きっと好きになると思う」



「へ?」



「なんてったって、芽依子サンの好きなモノですから」



「なっ!」



「絶対好きになれますよ、俺は。…ねっ?芽依子、サン?」



「………当たり前です」



プイッと顔を背ける彼女が可愛いと思う。



こんな彼女が拝めるのなら、鳥肌立つぐらい寒くてクサいセリフも、何度だって言えちゃう気がする。