まさかこんなにも素晴らしいスイーツ達を生み出す響さんが、甘い物を嫌いだなんて知らなかった。
だから、スイーツに愛着も何もないのか。いや、むしろ好きでもないものをセンスだけで作りあげるその憎たらしいほどの才能に少しだけイラッとした。


容姿もセンスもズバ抜けているなんて、天は二物を与えずなんて誰が言ったんだ。と心の中で悪態ついた。

「 ということで、バレンタインというものはこの店にはーーー 」


ない。

そう言った響さんの声と、カラン、と鳴ったドアベルの音が重なった。


「 いらっしゃいませ 」