その後しばらく沈黙が続いた。

呼吸をする事を忘れるくらい、ぴたっと止まった張り詰めた空気のなか、意外にもこの状況を冷静に見ている私がいる。

さつきさんは表情に出さず、固まっている。
そんなさつきさんも美しく、私が男なら絶対好きになるだろうなと。

廣田くんも相変わらず美男子。でもいつものクールさはない。さつきさんのことになるとこんなにも心が乱れてしまう彼女の存在はすごいものだと思う。


「お待たせしましたー。アイスコーヒー三つです」

喫茶店の店員さんが机の上にアイスコーヒーを置くと、さつきさんが話し始めた。
意外にも冷静で、意外にも残酷で…


「話したいことってそのこと?
別にいいわよ。付き合いたければ付き合えばいいんじゃない?別に私の許可なんて必要ないでしょ?別に私隼人の彼女じゃないんだし。



隼人の気持ちはよくわかったよ。
死んで欲しいってことだよね、
私に」

"死"
さつきさんは、いとも簡単にその言葉を発した。

当たり前のように…言葉の威力を分かった上で使ってる。

「分かってるくせに!ひどいです!」

廣田くんが何かを言おうとしたタイミングで私が先に声を出していた。

「ひどいのはどっちよ!私は隼人がいなきゃ生きてけないの。隼人がいなきゃ死んだほうがマシよ」


冷静だったさつきさんは、いきなり沸点に達したかのように、怒鳴り声をあげた。


そんなさつきさんもやはり美人で…ひどいと言ってしまったけど、本当はムカつくこともできなければ、むしろその逆で愛らしさまで感じてしまう。

なんでだろ。

それって…
純粋だからなのかな。