「…捨てられなかったんだ。ずっと。
でも、捨てなくていいって言われたら、
なんかスッキリした。」

段ボールに詰め終えると、
タケルはポケットからスマホを取り出し、
写真を撮り始めた。

「この家、どうなるの?」

「売り手が決まってる。
だから本当にこことは、おさらば」

…そうなんだ。

「なんで湊が悲しい顔すんだよ。
もうスッキリしてっから。
数時間前まで写真とか撮ろうなんて思ってもなかったしな。ここもちゃんと思い出にしとかねぇとさ。
いつか後悔したらやだかんな」

「うん!いつかまた笑って話せるように、
がんばろうね!」