コツ、コツと女性特有のハイヒールの音が響く。
漆黒の闇夜に何の違和感もなく溶け込んで歩く。腰までの黒髪に黒いシルクのドレス。更には黒一色の高めのハイヒール。
耳元に光るパールのピアスだけが唯一、暗闇の中、光を放っている。
夜風に髪を靡かせながら、どこかかったるそうに歩いていた女はふと立ち止まった。
「・・・ねぇ、」
女は突如、闇夜に問いかけた。
「私に、何の御用かしら。」
ゆっくりと振り返った女の視線の先には
「あら、今日は・・・お客様が多いのね。」
口角を釣り上げてその美しい容姿には似合わない・・・不気味とも妖艶ともいえる笑みを浮かべた。
「来ていただいて嬉しいのだけど」
「さようなら」