《side 桜夜》
「奏人……!」
私は奏人の背中を見守る事しか出来なかった。
私は奏人みたいに武術が出来るわけじゃない。
私なんか放って置いて逃げてよ……!
だけどこの思いは言葉として発せられることはなかった。
あまりにも突然すぎる出来事に頭が追いついていない。
__ドフッ
「かはっ……!」
奏人が地面に打ち付けられてしまった。
「か、奏人…………!!」
私の所為で奏人が傷付いてる。
私の所為で人が不幸になる。
私が居なければ……!!
私のなかで黒いものが渦巻く。
真っ黒な塊。
私が不幸にさせてしまう世界なら何もかもも消えてしまえばいいのに
真っ黒な塊が膨らむ音がした。