翌朝、とてもとても重たい気分のまま出勤。昨日は幸せだった。いろいろ二人で決めて、やっとこれから新婚生活を満喫出来る。そう思って嬉しかった。でも朝目覚めて昨日のことでからかわれると思うと出勤拒否したくてたまらない。

「やだ、行きたくない」

駄々を捏ねてみるもこの際、開き直ろうと無理矢理祐に腕を引っ張られ、会社まで連れて来られた。ああ、やだ。社長にまた、真似される。始業時間が回っても入れずにいると中から声が聞こえてきた。

「はい。まだ次のツアーの日程は決まってないんです」

「はい。中途採用ですか?今のところは募集はないのですが、はい。うちで働きたい?」

そろっと音を立てないようにドアを開け、中を覗くとみんなが鳴り止まない電話対応に追われていた。

「おっ、やっと来たな。昨日の夕方からこんな状態がずっと続いてんだよ。今度のママツアーはいつか?とか、うちで働きたいっていう電話が殺到しててな。お前らすごいな。影響力ヤバイぞ。さすが最高のパートナーと作り上げた企画だ」

「テレビだけじゃなく、ブログに書いてくれた人もいたみたいで本当にすごいですよ。葵さんツアー成功おめでとうございます」

「美夏ちゃん」

「企業説明会にも葵さんに来て欲しいって指名入ってますよ。本当に良かったですね」

「柳くん」

「葵、よくがんばったな。おめでとう」

「みんな、本当にありがとう」